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石巻ではたらくということ ドクターメッセージ

武藤 真祐理事長・院長 武藤 真祐|プロフィール(2012年8月現在)詳しく知る

1996年 東京大学医学部卒業
2002年 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了
2010年 祐ホームクリニック開設
2011年 祐ホームクリニック石巻開設

医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニック 理事長
一般社団法人高齢先進国モデル構想会議 理事長
NPO法人ヘルスケアリーダーシップ研究会 理事長
医学博士、認定内科医、循環器専門医、米国医師資格試験合格、米国公認会計士、MBA。
内閣官房IT戦略本部 医療分野の取組みに関するタスクフォース構成員
厚生労働省 緩和ケア推進検討会 構成員
みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会 システム構築委員会 委員
石巻市医療・介護・福祉・くらしワーキンググループ委員

石巻を、東北を、日本を、世界を創りましょう

共に石巻を支えてくれる先生と出会いたい

石巻訪問 祐ホームクリニック石巻は、東日本大震災により甚大な被害を受けた宮城県石巻市に2011年9月に開設された在宅医療専門の診療所です。


私が石巻市を初めて訪れたのは、超急性期医療のニーズが一段落した2011年5月上旬でした。 石巻市では、沿岸部を中心に街全体が壊滅的な被害を受け、住民の多くが健康に著しい影響を受けていました。特に避難所の多くの高齢者はADLが低下し、身体機能も認知機能も相当低下していることが見受けられました。当然ながら栄養状態も悪く、慢性期医療の需要の高まりが予見されました。
しかし、かかりつけ医院が被災休診し主治医不在になった人、車両等通院手段を失ったため診察や服薬が途絶えている人などが多く見られました。また壮絶な体験によるショックや喪失感からのうつ、PTSD等のこころの問題が表層し始めていました。これらの問題に対して、「待ち」ではないアウトリーチ型の医療が求められていました。

また、石巻市の基幹病院2病院の一翼を担っていた石巻市立病院が被災し診療機能を失い、急性期医療の需要が石巻赤十字病院に一極集中したことから退院圧力が高まり、医療依存度の高い方も含めて自宅に戻った後の生活を支える医療が求められていました。 加えて、自立困難な高齢者等が集められた介護福祉避難所には自立困難な高齢者が多くおられました。同避難所閉鎖した後の高齢者の行き場はなく、応急仮設住宅を含めた高齢者の自立生活を支える医療が求められていました。


診療風景1このように石巻では在宅医療が求められており、その担い手として私たちはこの地で開業をしました。現在では、大きく3層の患者さんがおられます。一つが、応急仮設住宅等に入居し通院困難になられたいわゆる虚弱高齢者の方々、もう一つが急性期病院を退院してこられるがんのターミナル期の方々、そして施設が被災し石巻に集団移転をしてきた高齢者施設の方々です。これまで拝見した患者さんの数は約170名、うち35名を自宅でお看取りさせていただきました。現在では、100名ほどの居宅患者さんと30名ほどの施設の患者さんを診ています。


祐ホームクリニックは現在、私と全国からの支援医師で診療を行なっています。中でも家庭医輩出機関としての高い実力をお持ちの北海道家庭医療学センターの先生方が、当院を通じて共に震災復興期の地域医療に取り組んでくださり、大変心強く感じています。


開業から間もなく1年。現在私たちは、医師を求めています。この地に住み、ともに地域医療・地域保健に取り組む医師、在宅医療の現場で最期の看取りのときを、家族を含めて支えてくれる医師を求めています。今は、多くの先生方の応援を支えに私が踏ん張っていますが、共に石巻を支えてくれる先生と出会いたいと、心から願っています。


当院でともに取り組んで頂く魅力

当院でともに取り組んで頂く魅力を3つ挙げます。


診療風景2一つは、被災地での在宅診療そのものです。震災後、それぞれの家庭環境が激変しました。家族との急な同居や別居、馴染みのご近所さんの転居、慣れない地域かつ応急仮設住宅での生活のスタートなど著しく家庭環境が変化する中、自宅療養する高齢者やそのご家族は、多くの不安を抱えておられます。環境の変化による身体状況の変化、それに伴うメンタル面での負荷など、震災に起因する様々な健康への影響が現れています。これまでであれば病院で最期を迎えていたターミナル期の方も多くが自宅に戻られています。そんな中、医師が訪問し地域保健の観点も含めてその家庭を支え、そして最期を看取っていきます。私たちは確かな医療と温かく誠実な態度、そして私たちに連なる医療・介護・福祉・保健のネットワークで、患者さんやご家族の信頼に応えていきます。医療の原点であり、医師の醍醐味を実感します。


次に、私たちは在宅医療というアウトリーチ医療に加えて、地域復興活動を行なっています。保健師や看護師、ソーシャルワーカーなどの専門職を中心に「石巻医療圏 健康・生活復興協議会」を立ち上げ、石巻市や宮城県と強力に連携し、地域の保健師や地域包括支援センター、精神医療の専門職団体や地元NPO等とともに、住民の健康・生活を包括的に支える活動を行なっています。来年3月までの間に約20,000人日を動員する予定で、新生石巻市の創造に尽くしています。


最後に、私たちはこの地で、医療介護の新しい連携の形を作ろうとしています。患者さんを中心に、地域の調剤薬局や訪問看護ステーション、居宅介護事業所等とのシームレスな情報連携を目指し、新しいクラウドシステムを構築しました。このシステムの実証は、この7月から総務省の実証事業としてスタートします。

住民の生命と生活を守りながら、新しい医療・介護の形を創っていく、そんなやりがいのある場所がここにあります。たった1人の医師の存在が、新しい地域の創造を支えます。
ぜひ、力を貸してください。ご連絡をお待ちしています。


医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック石巻
理事長・院長 武藤 真祐




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