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原口 一博さん (総務大臣)「健康、医療、介護分野におけるICT利活用」

総務大臣 原口一博さん原口 一博さん |プロフィール(2010年8月現在)詳しく知る

1983年 東京大学文学部卒業
1983年 財団法人 松下政経塾入塾
1996年 衆議院議員初当選
2009年9月 総務大臣就任

対談内容

我が国のクラウド化については、政府の力強い推進のもと、企業や国民の総意で実現に向け取り組まれています。医療領域に関しては、総務省では「光の道構想」において、また内閣官房IT戦略本部では「地域の絆の再生」のテーマで、医療分野でのICT利活用は最重要領域と位置付けられています。今回は、本国家プロジェクト推進の頂点におられます総務大臣の原口一博様に、その構想や思想をお伺いいたします。


原口総務大臣と対談01本日は貴重なお時間をありがとうございます。さて私どもは「希望ある社会の創造」を理念に、「在宅医療」に取り組んでいます。その現場においてICTの必然性を強く感じ、現在、産学官民を横断したコンソーシアムを構築、知恵と工夫を結集して、その具現化に取り組みたいと考えています。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
武藤さんが取り組んでいる在宅医療には期待していますよ、よろしくお願いします。
ありがとうございます。さてまずは、本年5月発表の「原口ビジョンII」の中の「健康・医療・介護分野におけるICT利活用」の目指すものをお聞かせください。
原口総務大臣01「原口ビジョンII」では、2015年までに光の道を100%にするという目標を掲げています。これはアクセスだけでなくアダプション(=適用性)についても言及しています。国民みんなが、いわば今の電話と同じように利用するようにしたい。この取り組みのコア領域は医療です。
例えば、ICTにより常時バイタルサインをモニターし医療者とつなぐといったサポートがあるとしたら、どうでしょう。医療機関に行って検査受けることは健康を守るために大切なことですが、それよりいつも医療者と「繋がって」いるならば、同等もしくはそれ以上の恩恵が受けられます。それは、国民の安心と利便性ためだけではなく、医療者の負荷を軽減し、そのマンパワーをより必要な部分に集中投入できるという恩恵も産みます。
ICT新ビジョンは、特に医療分野で、一人ひとりが医療のセーフティネットと繋がり、その情報をクラウド化することにより、より適切に、安心の社会を創ることを目指しています。
すばらしいですね。しかしこれまでパーソナルヘルスレコード(PHR)についてはセキュリティなどの点で推進に困難を伴いました。
個人IDに関する原口5原則というものがあります。その基本思想は、「PHRにより、個人情報のセキュリティは高まる」です。「IDと個人のデータがリンクしない」「IDが誰かに盗られ悪用される」といった危険な状況を避け、データを一元化しファイヤーウォールを幾重にもかけて守ります。
また、国や公的機関が情報を所有するため、個人が何か知りたいときの手続きは、わかりにくく不便でした。これは国民本位ではなく、抜本的に変えなくてはなりません。個人の情報が誰かに管理されコントロールされるという状況から、今後は個人が個人の情報をコントロールするという社会への変貌、これがPHRの考え方です。
武藤真祐民主党のいう「国民主体」に通ずる施策ということですね。 さて、日本はこれから世界に類のない高齢社会へ突入します。現政権では「国民主体」「生活を守る」という大方針のもとで、様々な施策を講じています。その目指す将来像について特に医療・介護分野についてお聞かせください。
私は、少子高齢化にあたって考えることがあります。「老い」とは何か、ということです。昔「大老」という言葉があったように、老いは「知恵がある」「経験を積んだ」という意味。私は、健康状態がよい状態で老いることができれば、こんなに素晴らしいことはありません。
では今「元気に老いる」社会構造かと言えば、介護保険や年金の仕組みはあるものの残念ながら十分ではありません。企業が補ってきた社会保障を、今後の少子高齢社会においては、社会全体が支えなければいけない。これが民主党政権の基本的な考え方です。その中でも医療については、今後さらに「質」を問う内容にしていかなくてはならないと考えています。
現在の医療法は「数」を問う発想であり、財政上の制約に直結してきます。これは変えるべきでしょうね。私たちはICTの力で医療の「質」を高めることによって、国民の安心を守ることに加え、医療現場の負荷も軽減したい。そして、マンパワーを最大化することによって、一人ひとりの安心を最大化したいと考えています。
「老い」の考え方には大変共感します。私たちも同じ思いで、「希望ある社会創造」を理念に、国民一人一人に最も近い存在となる医療「在宅医療」に取り組んでいます。原口大臣が目指される社会創りにあたり、私たちに期待することをお聞かせください。
本当に期待は大きいですよね。大変期待しています。
大病院の3時間待ち3分診療と言われますが、これは患者さんにとってもドクターにとっても不幸なことです。そもそも「行く」という行為が、特に高齢者にとっては負担が甚大です。そんな時間的・空間的制約を、在宅医療の仕組みによって劇的に変えられる可能性が、在宅医療にはあります。
また医療の機能分化を的確に行えれば、一層適切な診断・治療、適切なケア、適切な予防ができます。区を挙げて、また都道府県を挙げて、在宅医療を推進すべきでしょう。僕らも支援していける仕組みを作りたいと思います。
どうぞ、全国に武藤モデルを広めてください。それから、大変な仕事ですから、体には気をつけてくださいね。私が先生に言うのも何ですが(笑)。
大変心強いお言葉をありがとうございます。何より、国民のほとんどが「最期は自宅で迎えたい」との希望をお持ちであるならば、私たちは全力でそれを支援したいと考えます。
本日はありがとうございました。

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武藤 真祐(聞き手)
武藤 真祐|医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック 理事長 詳しく知る

1990年 開成高校卒業
1996年 東京大学医学部卒業
2002年 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了
2010年 祐ホームクリニック開設
2011年 祐ホームクリニック石巻開設
内閣官房高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部 医療分野の取組みに関するタスクフォース構成員
みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会 システム構築委員会 委員
石巻市医療・介護・福祉・くらしワーキンググループ委員
経済産業省地域新成長産業創出促進事業ソーシャルビジネス推進研究会委員等公職を歴任

原口一博さん04

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