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石巻ではたらくということ ドクターメッセージ

丹野 佳郎氏丹野 佳郎 先生|プロフィール(2012年6月現在)

1980年 東北薬科大学薬学部卒業
1980年 (有)ラッキー薬局入社
1995年 医療法人有恒会こだまホスピタル薬剤部入局
1997年 石巻薬剤師会会営石巻医薬品センター薬局
1998年 石巻薬剤師会理事、 宮城県薬剤師会代議員
2002年 宮城県薬剤師会理事
2004年 宮城県薬剤師会常任理事
2006年 宮城県ケアマネジャー協会石巻支部支部長
2008年 宮城県薬剤師会副会長、日本薬剤師会代議員
2010年 一般社団法人石巻薬剤師会専務理事

「石巻に在宅医療を定着させ、石巻を復興しましょう」

丹野 佳郎先生にお話をうかがいます。


丹野先生の薬局は、私たち祐ホームクリニック石巻の隣にあり、毎朝のミーティングなどで薬の処方の連携を行っていただいています。東日本大震災後、丹野先生がどのように活動されてきたのかをお聞かせください。

丹野さんインタビュー1

私どもの薬局は石巻市立病院の近くにありました。昨年の3月11日の大地震直後の津波で流されてきた燃え盛る家屋からの延焼によって、薬局は焼失してしまいました。幸いなことにスタッフは全員避難していたので無事でした。
そうした状況のなか、私は石巻日赤病院内に設置された石巻医療圏合同医療チームに参加して、全国から支援に来ていただいた薬剤師の連絡調整を主に行っていました。そこでは、避難所の方や在宅避難の方へ医薬品をどう供給するかに苦心しました。

少し落ち着いてきた5月頃、被災地支援に入られていたPCATの医師たちから「この先、在宅医療の体制をきちんと整備しないと大変な事態になる」ということを聞かされました。

7月頃には、“在宅医療に対応する薬局の必要性”を何度も聞くことになりました。在宅医療の場合、薬局も訪問薬剤管理指導をしなくてはなりません。石巻でそれができる薬局があるかを尋ねられたとき、私どもの薬局は活動していなかったので、在宅医療を担う薬局活動をやろうと決めたのです。
祐ホームクリニック石巻の隣で、訪問調剤薬局を行うことにしたのは何故でしょうか。
武藤真祐先生が石巻市で在宅医療専門のクリニックを展開するということを知り、いろいろお話をさせていただきました。石巻の厳しい医療状況への対応を急ぐ必要があるなかで、石巻医療圏以外から最初にクリニックを開設するというスピード感が魅力でした。そして、武藤先生と一緒にやろうと思ったのです。

地元の診療所も無くなっていたり傷んでいたりで、いかに早く在宅医療を立ち上げるかが求められている状況で、武藤先生のアクティビティの高さに共感しました。しかも、クリニック建設予定地に薬局を建てるスペースがあるということで、クリニックの隣に設置することになりました。かつて石巻市立病院の先生が始めた在宅医療で何人かの患者さんへの訪問を行っていたので、在宅医療は初めてではありませんでしたが、これだけ規模が大きなものは経験していません。現在、在宅訪問の仕事が全体の約92%を占めています。
丹野先生から見て、祐ホームクリニック石巻の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

丹野さんインタビュー2

普通だとカンファレンスなどに調剤薬局が参加するのは難しいのですが、祐ホームクリニック石巻では毎朝のミーティングに加わり、患者さんの情報を十分得たうえで調剤や服薬指導ができます。患者さんにとっても薬剤師にとっても非常によいことだと感じています。武藤先生は、すでに東京で患者情報を多職種で共有するシステムの実績をお持ちで、ここでもすぐに体制ができました。きめ細かい患者情報を得られ、しかも医師の方々と薬について相談しながらできるのは理想的です。

訪問専門の薬局をやってよかったのは、実際に患者さんのベッドサイドまで行き、専用のお薬カレンダーをつくり、飲みやすくする工夫などを患者さんやご家族と話しながらできることです。被災した状況でご家族の介護力も落ち、患者さんご自身も心理的ダメージが大きく、普通の医療ではできない部分を担うのが訪問診療です。しかも、多職種がチームとして活動しなければ成り立ちません。そうしたチームの一員に薬剤師が加われることは大変うれしいことです。
丹野先生から見て、祐ホームクリニック石巻に求められるのはどのような医師だと思われますか。
被災地で在宅医療を求める多くの人に医療を提供したいというマインドをお持ちの医師の方に来ていただきたいですね。今後も在宅医療が必要になる患者さんがさらに多く出てきます。なかなか復興が進まない現状のなかで、医療という面で継続的に関わっていただきただけることを願います。

患者さんやご家族は、馴染みの医師に診てもらうことで安心感が高まるのは確かだと思います。祐ホームクリニックではこれまで25人くらいのがん末期患者さんの看取りも行っています。これからさらに需要が多くなると考えられ、医師の関わりも重要となります。ターミナルケアで看取りに関わることは、医療のあるべき姿を見つめ直すきっかけにもなります。外来から入院、そして在宅というシームレスな医療体制が石巻赤十字病院を中心にできつつあり、「最期だけ在宅」というのではなく早い段階から在宅医療に入り、その延長でターミナルケアへという流れが患者さんやご家族が求めている姿だろうと思います。石巻では問看護ステーションはじめマンパワーが十分温存されているので、それを実現することは可能だと考えています。
最後に、丹野先生から祐ホームクリニック石巻で働いていただく医師の方々へメッセージをお願いいたします。

被災地である石巻は、患者さんにとってまだまだ厳しい医療状況が続いています。石巻に在宅医療を定着させ、石巻の復興のために力をお貸しいただきたいと思います。




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