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石巻ではたらくということ ドクターメッセージ

中山 明子先生中山 明子 先生|プロフィール(2012年8月現在)

2006年 岡山大学 医学部 卒業
2006年 洛和会音羽病院 初期研修、総合診療科後期研修医
2009年 亀田総合病院 家庭医診療科 後期研修医
現職   大阪家庭医療センター・西淀病院 家庭医・地域総合内科 所属

家庭医が得意とする分野を経験できるのも在宅診療の面白さです。

祐ホームクリニック石巻と中山明子医師との出会い

2011年3月の東日本大震災から半年、2011年9月に中山明子医師は宮城県石巻市に降り立った。
当時、中山医師は千葉県鴨川市にある亀田総合病院 家庭医診療科に勤務していた。1週間の夏季休暇を利用して、被災地支援という希望がようやくかなったのである。

中山医師が祐ホームクリニック石巻を訪れたきっかけは、勤務する亀田総合病院で在宅診療を行っている小野沢 滋医師からの紹介である。 「祐ホームクリニックという診療所が、石巻市に在宅医療専門の診療所を立ち上げた。1週間でもいいので手伝ってみてはどうか」その言葉を聞いて、即決したのだ。


混沌とした中で自分ができること

震災から半年、当時の石巻市は混沌としていた。当時の祐ホームクリニック石巻の状況も同様であった。
現在は落ち着いているものの、石巻市に開院して1ケ月の祐ホームクリニック石巻内のスタッフは、だれがどの仕事を担当するのか手さぐり状態。
クリニック外部の環境はといえば、訪問看護ステーションも復帰仕立て。訪問看護ステーションが活動しているのか、どこのケアマネージャーがどのような働きをしているといった情報もクリニックのスタッフ皆で手分けして情報を集めていた。

「その混沌とした中で、何が最善の策かわからないながらも一生懸命に医療にむかっているスタッフの姿が印象的で興味深かったですね。」と中山医師は話す。
その中で中山医師は 「混沌とした中であるからこそ、“お医者様”と呼ばれない関係づくりに取り組みました。診療所に勤務してまだ間もないというスタッフもいたので、何でも気軽に聞いてもらえる雰囲気を心がけましたね。」


祐ホームクリニック石巻での経験から得られたこと

中山先生02 祐ホームクリニック石巻での経験は中山医師の医師としてのキャリアで活かせるところがあったのだろうか。
中山医師によれば、1つは有事の際を想定して物事を見る視点だという。
「信頼関係が構築されてくると、被災経験を生の声で聴く機会も多くなってきます。スタッフも被災者であり、自分たちも仮設住宅から通いながら地域住民のことを考えています。 医療資源がないところからどのようにして立ち上がったのかというような、体験した人にしかわからない話が聞けるだけでも有事の際に備えて対策を考えるようになりました。平和な日常に慣れてしまいがちな中、例えば、日々の在薬管理を1日単位で行ったならば、少なくとも数日分は必要だ、人工呼吸器のバックアップ電源はあるかなど問題が起こった場合を想定して振り返ることができるようになったことは大きな収穫です。普段の診療姿勢も変わりましたね。石巻に来て本当に良かったと心から実感しました。」と当時を振り返り中山医師は話す。


在宅診療は診療科にとらわれないだけでなく、患者とかかわる職種も多岐にわたる。
医師や看護師だけでなく、ケアマネージャー、訪問ヘルパー、薬剤師、理学療法士など多くの職種と関わりながら療養する患者とその家族を支えている。そのため、逆に在宅診療の中で家庭医の経験が生かせたことも多くあったという。 「診療科の垣根がないため、けがや骨折の初期対応、内科症状の相談など難しい症例でなければ対応が可能ですし、対応しやすい診療科です。またソーシャルサービスのコーディネーションも家庭医の得意分野ですので、救急医の先生にはない、家庭医ならではのいかせる分野がありました。」と中山医師は話す。
中山医師からの言葉からわかるように、逆に言えば在宅診療を経験することで、診療科に縛られない症例を経験でき、ソーシャルサービスのコーディネーションといった家庭医が得意とする分野を経験できるのも在宅診療の面白さではないか。

最後に、祐ホームクリニック石巻の魅力を中山医師に尋ねてみた。
「祐ホームクリニック石巻の魅力は何と言っても“人”です。スタッフの教育がよく働きやすいクリニックです。
それだけではなく、スタッフに思いやりがあり、地域に愛情を持っています。みんなの気もちがこもった素敵な在宅クリニックだと思います。ぜひ石巻のために良い医療を提供していただきたいと思います。」




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